15.*空虚*

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「戻るって、どこに……っ!?」 答えが返ってくることのない問を風花は叫び、ベッドに顔を埋める。 そこからした匂いは海の物でも、自分の物でもない、異質な匂い。 たった数時間前まで、風花のそばに居た。 好きだと言って、キスを重ねた。 離れないと約束してくれた。 その男はもういない。 風花の手の届きそうにない、あの教会のまたその奥へ行ってしまう。 逃避行のようなことをしていても、この不安が消えることはなかった。 海の目は時々風花を見ていなかった。 いや、むしろ見るように努力しているようにさえ思えた。 消えてしまう。自分が風邪を引いている間に。 寝なければ良かった。そうしたらこんなに苦しむこともなかった。 胸が張り裂けそうにいたい。 ここは確か、高級なホテルだったはずだ。 思い切りベッドに顔を埋めて、声を押し殺すことなく散々泣いた。 誰も見ていないことをいいことに、鼻水もそのまま泣いた。 『戻るよ』 本当に言うことは曖昧だった。 風花の元になのか、自分の家になのか。 分からないのは、きっと海の思惑だと分かってるからなおさら悲しかった。
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