16.*幸福*

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「信じられねぇな、おまえ。 どうやって、こんな会社にしてきたんだよ。 海が今までやってきたこと見たんじゃねぇのかよっ! どんな思いで、アイツ結婚式から抜け出したと思ってるんだよっ」 「だから、あの連れ去った女と駆け落ちするためだろう」 「違うのが、どうして分からねぇんだよっ」 焦れったい、というのが声だけで表に出ていた。 空がさらに絞り出すように叫ぶ。 「海はおまえなんかよりも、ずっとここの会社が好きだよ。 なんだかんだ言って、あいつが身体を張って必死で守ってきた場所なんだ。 分かってやれよ」 「でも結果は結果だ。 あいつは、会社をつぶそうとした。 勘当するに十分値するだろう」 「だから、それは……っ」 「それはなんだ。 事実は事実だ。変えられない」 親父の言葉には、動かないという意思がしっかりと込められていた。 いつもだったらここで俺たちは引き下がる。 それがいつものお決まりだった。 「……っなんで分からないんだよっ」 「分かるも分からないもない。 全部事実だ」 「……っちくしょ」 歯軋りする音が聞こえた。 多分、空だろう。 俺の為にこんなに必死になるのは空ぐらいしかいない。
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