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「信じられねぇな、おまえ。
どうやって、こんな会社にしてきたんだよ。
海が今までやってきたこと見たんじゃねぇのかよっ!
どんな思いで、アイツ結婚式から抜け出したと思ってるんだよっ」
「だから、あの連れ去った女と駆け落ちするためだろう」
「違うのが、どうして分からねぇんだよっ」
焦れったい、というのが声だけで表に出ていた。
空がさらに絞り出すように叫ぶ。
「海はおまえなんかよりも、ずっとここの会社が好きだよ。
なんだかんだ言って、あいつが身体を張って必死で守ってきた場所なんだ。
分かってやれよ」
「でも結果は結果だ。
あいつは、会社をつぶそうとした。
勘当するに十分値するだろう」
「だから、それは……っ」
「それはなんだ。
事実は事実だ。変えられない」
親父の言葉には、動かないという意思がしっかりと込められていた。
いつもだったらここで俺たちは引き下がる。
それがいつものお決まりだった。
「……っなんで分からないんだよっ」
「分かるも分からないもない。
全部事実だ」
「……っちくしょ」
歯軋りする音が聞こえた。
多分、空だろう。
俺の為にこんなに必死になるのは空ぐらいしかいない。
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