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「……いや、カイは勘当しない」
「……」
口を開いたのは、今まで堅く口を閉ざしていた岳だった。
ドアの隙間から、腕組みをして立っている岳の姿が一瞬見える。
「……なに」
「だから、勘当しないって言ったんだ。
アイツはうちに必要不可欠だ。
戻って貰わなくちゃ困る。
そのために風花が必要なら、風花を結婚させれば良いだけの話だ。
カイを失う損失と、風花とカイを結婚させる損失だったら、俄然前者の方が大きい」
「………」
「現に、今この株価が暴落しているのは、うちが神崎と手を切った所為だ。
風花と結婚させるなら今だけですむ。
ただし、ここで営業をなくしたら他の得意先まで手を切らなくちゃならなくなる。
そしたらそれこそ、一貫の終わりになる。」
「だが、これはうちの決まりだ。
うちの言うことを聞けない人間はここにはいらない」
「『うち』なんて、カイがいなくなっちまえば滅びるだろ。
そしたら元も子もない」
「………」
「海が逃げ出したこの状況を見れば、分かるだろ。
もう世間に広まり始めていて、収集着かないところまで来てるんだ。
そんなことを気にしている場合じゃないことくらい感じてくれ」
「……」
こんなことを言ったら失礼かもしれないけれど、正直意外だった。
岳が俺をかばってくれるとは、想像していなかったから。
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