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「悪いけど、今ココで渋っている時間も勿体ない。
親父さっさと決めてくれ。
たかが結婚だ。どうだっていいだろう。
くだらないことに執着してるんじゃねぇよ」
「………」
岳の口の悪さは、ここで初めて役に立っているような気がした。
淡々とした物言い。
理系の性格は、効率的なことを考えることを優先とさせて、感情はいつも後回しだ。
頭の良い、次期社長の本領発揮の瞬間だった。
「……分かった」
「じゃあ…」
「ただし、条件がある」
親父は重々しく、『ただし』の部分を強調してそう告げた。
「……なに」
「ただし、海が次裏切ったときは容赦はしないこと。
それは例えどんなに些細なことでも適用させる。
それが条件だ」
「……」
どんな些細なことでも。
非常に曖昧な言葉がその口から紡がれて、岳と空は一瞬口を閉ざす。
俺はその様子を聞きながらゆっくりと少し重いドアを開いて、口を開いた。
「約束するよ」
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