16.*幸福*

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「悪いけど、今ココで渋っている時間も勿体ない。 親父さっさと決めてくれ。 たかが結婚だ。どうだっていいだろう。 くだらないことに執着してるんじゃねぇよ」 「………」 岳の口の悪さは、ここで初めて役に立っているような気がした。 淡々とした物言い。 理系の性格は、効率的なことを考えることを優先とさせて、感情はいつも後回しだ。 頭の良い、次期社長の本領発揮の瞬間だった。 「……分かった」 「じゃあ…」 「ただし、条件がある」 親父は重々しく、『ただし』の部分を強調してそう告げた。 「……なに」 「ただし、海が次裏切ったときは容赦はしないこと。 それは例えどんなに些細なことでも適用させる。 それが条件だ」 「……」 どんな些細なことでも。 非常に曖昧な言葉がその口から紡がれて、岳と空は一瞬口を閉ざす。 俺はその様子を聞きながらゆっくりと少し重いドアを開いて、口を開いた。 「約束するよ」
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