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「……なんか、平和だねー」
杏奈が瓶入りオレンジジュースの蓋を栓抜きを使って開けながらぽつりと言う。
それをサポートするように、岳が四つのコップを杏奈の前に置いた。
「俺が苦しんでいるのを見て、平和っていうのはどういうことだよ、杏奈」
空が不服そうに唇を尖らせる。
それを見て杏奈はふふ、と笑った。
「だって。
だって兄弟みんなでこんな風に集まるのっていつぶりだと思う?」
「四年か、五年くらいじゃねぇの」
岳が淡々と答える。
それに「でっしょー!?」と杏奈は言った。
「五年よ、五年!
なんか微妙に亀裂が入ってから、もう修復できないかと思ってた」
「別に、亀裂なんて入ってないだろ」
「入ってたよ。
知らず知らずのうちに、いつのまにか気まずくなってたよ。
こういうの、修復してくれたのって結果的に風花じゃないかなぁ」
杏奈は近くにあったクッションをぎゅうっと抱きしめて、満面の笑みを浮かべる。
その隣で涼しい顔をした岳は、それに似合わずオレンジジュースを一口飲んだ。
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