16.*幸福*

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「……なんか、平和だねー」 杏奈が瓶入りオレンジジュースの蓋を栓抜きを使って開けながらぽつりと言う。 それをサポートするように、岳が四つのコップを杏奈の前に置いた。 「俺が苦しんでいるのを見て、平和っていうのはどういうことだよ、杏奈」 空が不服そうに唇を尖らせる。 それを見て杏奈はふふ、と笑った。 「だって。 だって兄弟みんなでこんな風に集まるのっていつぶりだと思う?」 「四年か、五年くらいじゃねぇの」 岳が淡々と答える。 それに「でっしょー!?」と杏奈は言った。 「五年よ、五年! なんか微妙に亀裂が入ってから、もう修復できないかと思ってた」 「別に、亀裂なんて入ってないだろ」 「入ってたよ。 知らず知らずのうちに、いつのまにか気まずくなってたよ。 こういうの、修復してくれたのって結果的に風花じゃないかなぁ」 杏奈は近くにあったクッションをぎゅうっと抱きしめて、満面の笑みを浮かべる。 その隣で涼しい顔をした岳は、それに似合わずオレンジジュースを一口飲んだ。
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