16.*幸福*

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「そうかもな」 一番最初に、その言葉に同意したのは意外にも岳だった。 ゆらゆらと岳の手の中で揺れるオレンジジュースを睨むように見つめながらポツリと言葉を零す。 「俺、風花が初めてだったよ。 キスをするのためらったの」 「ぶっ」 岳の言葉に、空が飲んでいたビールを吹き出した。 「うわ、汚ね」と容赦ない言葉を岳が告げる。 「……なにっ?! おまえと風花ちゃん、そういう関係だったの」 「おー。 ていうか一回付き合ってたし」 「ごめん。この話題やめようか。 俺、殺意しか芽生えない」 風花と岳が付き合っていたという事実に、無性にイライラしてそう告げると、俺の隣に座っていた空がニヤリと口角をあげた。 「ちょっとなーに、海くーん。 ヤキモチ~?」 「うざい。 妙な絡み方やめてよ」 ニヤニヤする空を横目で睨むと、空がニシシッと笑う。 結婚している余裕なのかしらないけど、すごく腹が立つ。 「余裕ねぇのな、カイ」 「あんたに言われたくないし。 あんただって、杏奈に余裕ないじゃん」 岳が上から目線で言ってくるから、それに言い返すと、岳が鼻で笑って 「杏奈は俺のコト大好きだから。 別に余裕だけど」 と自信たっぷりにそう告げた。
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