16.*幸福*

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「飯島くん」 「ん?」 「メモで泣かせたお詫びが欲しいんですけど」 「……お詫び、ね。 なんでしょうか」 飯島くんがあたしの手をぎゅっと握って、そう尋ねる。 あたしはおどけた仕草で、人差指一本をたてた。 「アメ一つ、ください」 「アメ?」 「そう、オレンジ味のヤツ一つ」 飯島くんはあたしの提案を聞いてパチクリと目をしばたかせる。 そして、ふっと優しく瞳を細めた。 「ダメ。あげない」 「えっ、ダメなんですか!?」 「うん。電車の中ではダメだよ」 飯島くんはクスクスと笑って、あたしの頭を撫でる。 そして、ゆっくりと身をかがめると、あたしの耳元に唇を近づけて囁いた。 「朝比奈さんは、自転車運転中にしか飴あげないから」 ----END-----
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