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「飯島くん」
「ん?」
「メモで泣かせたお詫びが欲しいんですけど」
「……お詫び、ね。
なんでしょうか」
飯島くんがあたしの手をぎゅっと握って、そう尋ねる。
あたしはおどけた仕草で、人差指一本をたてた。
「アメ一つ、ください」
「アメ?」
「そう、オレンジ味のヤツ一つ」
飯島くんはあたしの提案を聞いてパチクリと目をしばたかせる。
そして、ふっと優しく瞳を細めた。
「ダメ。あげない」
「えっ、ダメなんですか!?」
「うん。電車の中ではダメだよ」
飯島くんはクスクスと笑って、あたしの頭を撫でる。
そして、ゆっくりと身をかがめると、あたしの耳元に唇を近づけて囁いた。
「朝比奈さんは、自転車運転中にしか飴あげないから」
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