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あきらめのため息を小さく吐いて、ベッドの上に胡座をかくと、ふと視線がピタリと杏奈とあった。
その瞬間、花が咲くようにその顔がパッとほころびる。
あぁ、幸せそうだなとその顔を見ながら実感した。
岳と杏奈は、たぶんまだ付き合ったりとかしていない。
この二人は非常に複雑で糸の絡みもそう簡単にほどけやしないのだろう。
けど、風花を最後に岳は杏奈をいじめていない気がする。
少なくても杏奈は泣いていない。
そこに深く干渉するのはきっと岳が嫌がるだろうからとやかく首を突っ込んではいないけど。
「そいや、海さー風花ちゃんと順調?」
「は?」
突発的にいきなり風花の話題が出てきて、反射的な返事が出た。
何の気なしに聞いたらしい空は、こっちを見もしないでビールの缶をあけている。
「え。なんで?」
「いやー、だってあんだけ揉めといて別れました。じゃ洒落になんねぇだろ」
「……あぁ、その節はお世話になりまして…」
これを言われたら頭があがらない。
胡座をかいたまま頭を項垂れるとハハ、と空が笑った。
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