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「カイ、携帯」
「分かってるよ」
仕事か何かかな、と思って開いてみて違った。
表示されたのはアドレス帳の中、誰よりも最も連絡を取りたい人物で、今誰よりも連絡を取りたくない人物。
一瞬固まった俺の様子で察したのか、空がひやかすように口笛を吹く。
「ひゅー、彼女からだ、彼女からー」
「ひゅーひゅー」
空の悪のりに便乗して杏奈もひやかす。
杏奈は口笛じゃなくて、明らかに「ひらがな」表記の言葉だったけれど。
「お前ら一体いくつだよ」
あきれ顔で突っ込む岳も、酔った空には無力だ。
「いやいや、岳さんイケねぇぜ。
こんなときは、可愛い弟ひやかさねぇと」
「可愛いくないだろ、コイツ」
妙な絡み方をしてくる空をウザそうに左手でしっしと払いながら、あきれ顔で岳が酒を飲み干す。
空が座っている席の横には既に3本目のビールが置かれていた。
「……あのさ、酔った人に囲まれながら電話とかしたくないから俺、部屋出るね」
「なんっだよ、イチャイチャしちゃうのかよォ」
「空、マジで絡み方うぜぇ」
ごちゃごちゃと会話が盛り上がる俺の部屋のドアを開けて、俺は長い廊下に出た。
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