番外編01

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「もしもし?」 『もしもーし、仕事中でした? なんか出るの遅かったから』 ふわっとした風花特有の話し方が電話口から聞こえた。 電波に乗って、少しだけいつもと違う声色とはいえそこは変化がない。 「んーん、全然。 ちょっと邪魔が入って」 自分で言っていて、自分の声が随分柔らかくなっているのが分かった。 さっきみたいなトゲトゲした気持ちがふっ、と消えて芽生えたのは甘い気持ち。 声は柔らかくなったというのか、甘くなったというのかは定かではない。 『邪魔って、空さんとかですか?』 「うん。酒入って酔ってんの」 『わー、空さんさらに元気になってる気がしますね』 「元気ってか、うざくなってる。いつもの数倍」 アハハ、と心地の良い笑い声を聞きながら階段を下りる。 ギシギシと音がするこの場はいやに静かだ。 「で?どうかしたの?」 『――え、あ……どうかしたって、訳でもないんですけど……』 「ん?」 『あー…、なんか、声聞きたいなー…って……』 ヘヘ、とはにかんだ笑いがその後に続いた。
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