2482人が本棚に入れています
本棚に追加
/675ページ
会いたいよ。俺だって。
声だって聞きたい。
放課後家に来る?なんてそれにこじつけた理由でしかない。
本当は家じゃなくたってどこだっていいんだ。
学校でも、公園でも、デパートでも、何もないただの遊歩道だって構わない。
何かするなら風花とがいいし、誰かに会うなら風花が良い。
だけど俺は風花みたいに素直になれないから、そんなこと口に出せない。
言えないけど、本当はきっと風花が思ってるよりもずっと風花が欲しい。
身体とかだけじゃない、もうなんか存在そのものを手に入れたい。
「……」
『……そ、そろそろ切りますか……?』
「んー…」
俺と風花の間に沈黙が落ちる。
夜の闇のように静かで、でも寒くはなくて温かい。
「……まだ」
『え?』
「もうちょっと、このままにしとく……」
『……はい』
もう少し。もう少しだけでいいから風花の時間を俺が持っていたい。
こんな携帯だけで繋がる、小さな時間でも。
ソファに身体を預けて、全神経を何も音のしない携帯電話に注いで。
そして、ふっと思い出すのはメールで繋がっていたあの頃だった。
最初のコメントを投稿しよう!