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「まもなくー」
停車駅を知らせるアナウンスが車内に流れる。
ふと、飯島くんの方を見ると彼は眠そうに欠伸をしていた。
その手に携帯はもうない。
車内の電光掲示板に光り輝く毎日降りる駅の名前。
それを見つめて、まだ人がそれほどいなかった車内のドアへと歩く。
プシュー、という音とまた軽快な音楽が流れて、あたしも飯島くんも電車から降りた。
ふたりきりの時間はこれで終了。
別に会話もしないし。目も合わない。
特段女子と積極的に会話をしない飯島くんと。
特段男子と積極的に会話をしないあたし。
知らない人のふり、は当たり前。
いや、ただの顔見知りで存在は知る程度。
友人とすら呼べない。
駅から出れば、あたしは自転車。
彼は歩き。
ここからまた、別れを告げる。
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