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来世サポートセンターのからお知らせ、現在時刻23時57分。天候晴れ。
桂木 勝様、ほか二名の来世設定完了。23時59分より、新たな人生がスタートいたします。新しい人生を、思う存分お楽しみください。
私は眩しい日差しの中目を開けた。どういう訳だか木にしがみついている。声を出してみると喧しい声だまるで蝉である。というか蝉そのものである。
私は前世、つまりは人間で、桂木 勝という名前で生きていた。結婚をし、小学生になる息子と、幼稚園に入っている娘がいる。
妻と子供達を残し、私は交通事故に遭い死んでしまった。悔やんでももう悔やみきれない。
蝉の姿になったのは意外だった。来世サポートセンターの係員の話によると、前世の行いにより、生まれ変わる姿が決まるという。私は三十歳しか生きておらず、誰かの為に身を呈して尽くしたりもしていなかった。両親や兄弟よりも先に死んでしまい、恩返しも何もしていない。蝉に生まれ変わったのはある意味妥当なのだろう。
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