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蝉の一生は土からあがって一週間だといわれている。つまり私はあと一週間後の23時59分には死んでしまうということだ。
私はかなり昔の記憶を思い出した。人間の子供の頃だった頃である。
私は夏休みになると、実家の裏庭にある大きな一本木の集まる蝉や兜虫なんかを捕り、自由研究をしたり絵日記を書いたりしていた。今思うとなんて残酷の事をしていたのだろう。子供に悪気は無いとはいえ、蝉にとっては一週間の大事な命。もし全国の子供達に何か伝えることが出来たとしたら命の尊さであろう。
私が前世の記憶にしがみついていると、私の傍らに一匹の蝉が飛んできた。
その蝉は熊蝉のようで身体が大きい。彼は私に言葉を掛けてきた。
「やぁこんいちは」
「こんにちは」と私は返す。
「貴方も蝉になった元人間ですね。初めまして、前世での名前は鈴木 一郎と申します。今は熊蝉をやっています」
鈴木さんは前世の事わ語った。鈴木さんは沖縄県に住んでいた男性で、運送業の仕事中、飲酒運転をしていたトラックと衝突し、亡くなったそうだ。まだ二十代前半で、結婚もしていなかったそうだ。
「結婚を約束していた女性はいるんですけどね。そのまえに死んでしまいました。彼女にはホント申し訳ないです」
「それは残念ですね」
「いいんですよ。一昨日ね、彼女の家の近くに行ったのですが、どうやら新しいパートナーを見つけたらしく、幸せそうでした。桂木さんは結婚していたんですか?」
「あぁ、妻と子供を残したまましんでしまったよ。まだ父親らしいこともしていなかったのにな」
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