23時59分

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 鈴木さんは私の話を聞いてジジジと羽を動かした。  「そうですか、それはとても残念ですね」  「ええ、息子ともう一度キャッチボールでもしたかった。蝉ではなく犬とかなら出来たのでしょうが、それは叶いませんね」  「キャッチボールですか、よく父親とやりましたよ。あれ、古臭いのですがいいものですよね」  鈴木さんは羽を動かし始め、木から離れた。  「それでは私はこれで、桂木さんも、もし家族の事が気になるのなら、なるべく早くに行った方がいいですよ。何せ蝉の一生は一週間ですから」  そういって鈴木さんはどこかに飛び立っていった。  十二時を知らせる鐘の音が聞こえた。ここは公園の近くのようだ。公園と言うことは子供達が集まるかもしれない。もしかしたら捕獲される可能性もある。私は羽を確かめるように動かすと、公園から離れるように飛び立った。  思ったように真っ直ぐ飛ぶことができない。浮き沈みを繰り返すように飛び、やっとの思いで人気のない木に辿り着いた。だいぶ高い位置にしがみついたので、脚立などを使われなければ捕獲される心配はないだろう。
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