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蝉にどれほどの能力が隠されているか分からない。しかし、一週間、木に止まりながら羽を休めれば問題なくいけそうだ。しかし、これには大きな壁がある。
疲弊して木に止まっているところを発見されてはお終いだ。逃げる反応速度が遅れ、捕獲されるのは目に見えている。高く飛び、高いところに止まればいいが、それでは体力を早く消耗してしまいそうだ。
私は一抹の不満を抱えながら飛び続けた。そして数分が経った頃、目の前に聳える木に止まった。
「あっ!蝉がいた!」
その声に私は小さな心臓は破裂しそうな恐怖感を覚えた。しまった、人間が近くにいる木に止まってしまった。おのれ、この木に狙いでも絞っていたのか、なんと小癪な、向こうの木に行け、あの木の方が大きいではないか、虫とか沢山居そうではないか。
人間の少年は長い柄の虫取り網を構えて狙いを定めた。私にではなく、反対側にいた蝉を見つけたらしい。
その後、蝉の断末魔とともに、少年は歓喜の声を上げた。今日初めての収穫なのだろう、それでいい、自由研究は一匹で十分だろう。もうお家に帰りなさい。
私がそう念じていると、虫かごに捕獲した蝉を入れながら少年が「あっ!」と声を上げた。完全に私を見ている。まずい、これは非常事態だ。
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