23時59分

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すぐに飛び立とうとしたが、うまく身体が浮かばない。足が石の様に木にしがみついている。    少年は虫取り網を私に向けた。そしてそのまま振りかざし、私を網の中に閉じ込めた。    虫かごに監獄され、何処かへと誘拐される。虫かごには私より先に捕獲されていた蝉がいた。  「こんにちは、やられてしまいましたね」と彼が話しかけてきた。まるで他人事の様に愉快に笑っている。  「最悪ですよ。これから家族の顔を見ようと意を決して飛び立ったのに、あっ勿論元家族ですが」  「貴方も前世人間ですか、多いですね蝉に生まれ変わる人間。僕前世では斉藤 智親と申します。貴方は?」  「桂木 勝です。……ん?斉藤さんって確か、私と同時間に生まれ変わった方ですか?」    「あぁ!桂木さんでしたか、ええそうです。あの斉藤です。来世サポートセンターの待合室で話しましたよね。。いやはや、なんの巡り合わせかな、生まれ変わった人とまた出会うだなんて」    斉藤さんは生まれ変わる前、つまりは来世サポートセンターで、来世の種族設定中の待ち時間に会話した人だった。私と同時間に生まれ変わった人は二人いて、その一人が斉藤さんである。もう一人は朝比奈さんという女性である。
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