1、知らない街

4/4
前へ
/4ページ
次へ
「じゃあ自分の本を探しに行けばいい。」 そう言えば 「いや、この古書のエリアに人がいるのって珍しいから、何読んでるのかなぁと。ここらへんてヨーロッパの物だから言葉も難しいじゃない?よく読めるなと思って。」 どうやら上級生らしい。確かにこの本はフランス語だ。書かれている文字も手書きに近く読みづらい。 「読める物だから読んでいる。邪魔。」 私は一人で読んでいたいのに。さっさとどこかに行ってくれないだろうか。 「あーフランス語読めるんだ?ちょっと読んで欲しい本があるんだけど。どうかな?」 どうかな?と言っている割にはズケズケと物を言うやつだ。 「は?嫌だ。」 「イリス・フェルメリアっていう魔女の物語なんだ。他の言葉に訳されていなくて。」 イリス・フェルメリア。聞いたことがあるような気がする。 私が使っていた名前かどうかはよくわからないが、聞き覚えがある。 「イリス・フェルメリア?」 「フランスにいた魔女なんだ。元々はイギリスで生まれたらしいんだけど。」 読んで損は無いのかもしれない。 「わかった。ただし明日だ。今日はこの本を読みたい。」 そう言うと彼は破顔して嬉しそうにした。 「うわぁ。ありがとう。ずっと読みたいと思っていたんだ。あ、俺の名前はユウスケ。よろしく。」 そういって差し出してきた手を私はごく自然に握り替えした。 (まぁ。適当に読んでやれば満足するだろう。) そんなことを思いながら、師の本を借り自宅へ帰ることにした。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加