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「じゃあ自分の本を探しに行けばいい。」
そう言えば
「いや、この古書のエリアに人がいるのって珍しいから、何読んでるのかなぁと。ここらへんてヨーロッパの物だから言葉も難しいじゃない?よく読めるなと思って。」
どうやら上級生らしい。確かにこの本はフランス語だ。書かれている文字も手書きに近く読みづらい。
「読める物だから読んでいる。邪魔。」
私は一人で読んでいたいのに。さっさとどこかに行ってくれないだろうか。
「あーフランス語読めるんだ?ちょっと読んで欲しい本があるんだけど。どうかな?」
どうかな?と言っている割にはズケズケと物を言うやつだ。
「は?嫌だ。」
「イリス・フェルメリアっていう魔女の物語なんだ。他の言葉に訳されていなくて。」
イリス・フェルメリア。聞いたことがあるような気がする。
私が使っていた名前かどうかはよくわからないが、聞き覚えがある。
「イリス・フェルメリア?」
「フランスにいた魔女なんだ。元々はイギリスで生まれたらしいんだけど。」
読んで損は無いのかもしれない。
「わかった。ただし明日だ。今日はこの本を読みたい。」
そう言うと彼は破顔して嬉しそうにした。
「うわぁ。ありがとう。ずっと読みたいと思っていたんだ。あ、俺の名前はユウスケ。よろしく。」
そういって差し出してきた手を私はごく自然に握り替えした。
(まぁ。適当に読んでやれば満足するだろう。)
そんなことを思いながら、師の本を借り自宅へ帰ることにした。
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