余命5日のシェフ

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結婚式当日。 僕は、朝早くから起こされ 彼女にスーツを着せられた。 どうやら結婚式場が見つかったらしく 車で送ってくれるらしい。 いきなりな出来事だか 僕は、実感する事が出来た。 今日、この人と結婚する。 余命が短い事が本当に悔しかった。 もっと早く結婚したかった。 今思えばやり残したことだらけだった。 でも、それは彼女の一言で 無にかえた。 「なんて幸せなんだろう」 涙を流しながら 僕は、車に乗った。 車は意外なところに止まった。 「ここでやるの?」 オーナーや他の社員らが 出迎えてくれた。 紛れもなく、僕の仕事場だった。 中には僕らの親を含め 60席、すべて満席だった。 僕らは最高の一時を過ごした。 そして、最後の解散の時 僕は、彼女の車にメモを残した。 【クローゼットの3段目にあるものは 君のものだ 今まで好きでいてくれて本当にありがとう 本当に幸せだった。】 それを書いてなかに戻ると オーナーを呼びだした。 「キッチンを貸してください」 親を呼び 「約束のものキッチンに持ってきて?」 僕は、スーツでキッチンに立った。 そして出来上がった物を 彼女に持ってきた。 「俺、パスタしか作れない でも、お前には最後に俺のパスタを食べて欲しい」 ただのミートパスタ ごく普通のパスタ それを彼女は 美味しい、美味しいと 食べてくれた。 僕は、このパスタを作るために 今まで勉強してたと 考えてもいいんじゃないかと 思うほど幸せな時間だった。 僕はその式を境にすぐに容態が悪化して 緊急搬送された。 目をさましたら 彼女、親が回りにいた。 「あなたは最高の調理人だから」 彼女は僕があの日の給料で買ってきた バックを背負いそう言った。 今思えばあの日、仕事をサボらなければ バックは買わなくてすむし 式もあげなかったのではないだろうか? でも、あの日ああしてなければ 今、この涙は流せない。 「ああ、結構泣いたな…」 「そうだね」 無理に彼女は笑ってくれた。 「今までありがとう 本当にありがとう」 僕の墓には あの日いきなりの式で買うことの出来なかった 指輪が二個、置かれている。 死んでも僕は幸せものだ。
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