余命5日のシェフ

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次の日彼女はもういなかった。 朝早くから出掛けたようだ。 僕は結婚式のことを 仕事先と親に言えなかった。 仕事先は、どうしても気まずくなるし 親には病気を言いたくなかった。 でも、死んでからわかるよりは 今、言った方がいい。 そう思った。 「もしもし?」 「あら、久しぶり」 出たのはお母さんだった。 「…あのさ…」 理由を話した瞬間、母は涙した。 「明後日の結婚式来るよね? その時、お願いがあるんだ…」 そして、電話を切った。 車のローンもやってくれるって 事だったので、僕の財産はすべて 母にあげる事にした。 無一文になってしまった。 僕はその後、車を走らせた。 そして、イタリアンのお店へ。 頭を下げて謝るつもりだったが 12時をすぎ、客足はピークだった。 僕は今、行ったら迷惑だと感じた。 しかし、確か今日は… 僕は仕事場に足を踏み入れた。 「遅れてすいません すぐに着替えます」 みんなを唖然とさせつつ 僕は、仕事着に着替えた。 みんなの反対を押切 仕事場に立った。 「寝てればいいのに、こっちは大丈夫だから…」 「僕、今日はシフト入れていただいてる訳ですし 買いたいものがあるんです。 だから、今月分と今日の分の給料 いただけますか?」 僕は、得意のパスタを 作り始めた。 仕事が終わりオーナーが いくら欲しいのか聞いていてきた。 「6万です。」 オーナーは6万を財布からだし 「足りないけどボーナスだから」 頭をさげ、6万を頂いた。 「明日、結婚式やるんでしょ?」 「いや、場所が決まってないんです。」 オーナーはそっかと言い残し席をたった。 「残業があるから」 そう言ってキッチンに、1人で立つと 彼女さんに感謝しなよ? と、ボソッといった。
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