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「だめだめ、何でもかんでも大島に任せるのは悪いだろう? ここは公平にじゃんけんだ」  淡路が強弁し、結局誰が電話をするのか、じゃんけんで決めることになった。その結果、言い出しっぺの淡路が負けた。 「じゃ、お願いね」  花田がそんな言葉と共に満面の笑みを浮かべ、手をたたく。  淡路は、そんな彼女の様子に苦笑しながら電話を掛けたのだが、二十回以上コールしても電話に出ないらしい。 「だめだ、でない」  淡路がついに電話を切ると、 「じゃあ、どうするの?」と、原島愛果が疑問を口にする。彼女にとっては冷房が効き過ぎているのか、半袖から覗く両腕をさすっていた。 「どうすると言っても、あいつ抜きじゃ発表ができない。電話に出ない以上、呼びに行くしか無いだろう?」  松井の部屋がどこにあるのかを知っているのは、ゼミ生の内では男連中だけだった。それは、松井が発表会に遅刻をするのは一度や二度では無かったため、交代で何度も呼びに行っているのだが、女性陣が松井の部屋に行く事だけはどうしても嫌だと言うため、免除した結果だった。
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