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「どうせ、ネトゲでも夜通しやって、眠りこけているんじゃ無いの?」  とは、同じゼミ生の河辺実菜子の言葉だ。河辺はつまらなさそうに机に右肘をつき、手の甲に頬を乗せた姿勢でその言葉を口にした。Tシャツにノースリーブのデニムジャケットという出で立ちの彼女は、その見た目通り、身体を動かす方が好きな活動的なタイプで、このようにじっとしているのが苦手なのだ。すでに今の状態に飽きてきているのが容易に見て取れた。  彼女の口にしたそれは前回松井が遅刻した理由だったが、片桐も同じように考えていた。実は松井と同じネットゲームを少しだけだがプレイしている片桐は、松井が来ていないと聞いたとき即座に、最近そのゲームに大型のアップデートがあった事を思い出し、どうせネトゲに没頭してしまい、資料がまだできていないのだろうと予想していた。  淡路は、もう一度じゃんけんだ、と宣言した。先ほども書いたとおりゼミ生の内、松井の部屋がどこにあるのかを知っているのは、男達だけだったため、男三人でじゃんけんをする。その結果、片桐が負けた。
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