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「おい、いい加減に起きてこいよ!」  このままでは完全に不審者じゃ無いか、慌てた片桐はじれたようにドアノブをひねる。すると、ドアは意外なほどあっさりと開いた。ドアチェーンも掛かっていない。警官はますます不信を募らせたような表情で片桐を見る。 「いえ、本当に知り合いの部屋なんですよ。おい、松井!」  片桐はそう叫ぶと扉を大きく開いた。そして、悲鳴を上げる。ワンルームの造りは容易に室内を見渡すことができる。そして、部屋の真ん中に大きな物体が横たわっていたからだ。それは、人のような形をしていた。そして、顔を入り口の方に向けるようにして倒れていた。松井の部屋に倒れているのだから、それは当然、松井だろうと思われる。しかし、片桐にはそう断定することができなかった。なぜなら、その顔はまるで燃やされたようにただれ、人の顔であるとはとうてい思えない状態になっていたからだ。
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