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「そうですか」  石榴刑事の説明に、店長は大きく頷いた。わざわざ死体に触る必要は無く、また、現場保存の観点から、現場に誰も入らないように警官が見張っていた、ということなのかな。そんなことを考えていると、店長が、 「では、やっぱりおかしいですね」と、疑問を口にした。 「先ほどの話ですね。何がおかしいのでしょう?」  石榴刑事が興味深そうに尋ねる。 「簡単なことです。腕時計が止まっていなかった。それは普通に考えるとあり得ないのですよ」  店長の言葉に私は首をかしげた。腕時計がそんな頻繁に止まるなら、役に立たないじゃ無い、と思っていると、大野刑事も同じように感じたのか、 「どうしてです。昔の小説などではよく時計が壊れて死亡推定時刻が分かったりしますが、現実にはそんな事は滅多に起こりませんよ」 「一応、この店でも腕時計は取り扱っていますからね、最近の時計が壊れにくい事くらいは知っていますよ。最近の風防ガラスは、ガラスとは言ってもそう簡単に割れませんし、ガラスが割れたからと言って時計が止まるわけでも無い。そういう意味ではありませんよ」
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