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 そして、店長は私に顔を向け、 「寂しがり屋の時計です」と、眼鏡の奥で目を細める。 「あっ!」  私はその言葉で店長が言いたい意味を理解できた。さすがに、つい先ほど聞いたばかりなので覚えていた。これがもし、明日だったら、怪しかったかもしれない。でも、二人の刑事にその単語は当然通じないので、私に疑問の視線を向けてくる。  店長が説明をする気がなさそうなので、私は腕時計の写真を手に取り、間違いの無いことを確認する。 「ここにキネティックオートリレーと書いていますよね?」  腕時計を接写している方の写真を大野刑事達に示すと、二人は小さく頷く。 「これ、寂しがり屋の時計なんです」 「それはどういう意味ですか?」  石榴刑事が眉を寄せる。分からないのも当然だが、その様子に少し優越感を覚える。 「簡単に言うと、腕に巻かずに一日放置すると止まる時計なんです」 「止まる? どうしてですか?」 「電池の節約です」  私は店長がなんと言っていたかを思い出しながら応える。
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