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「この時計は、振ると充電されるんですよ」
「振ると充電される? ということは、一日放置すると電池が無くなると言うことですか?」
石榴刑事が私に聞いてくる。しかし、私にはそれ以上説明することができず、言葉に詰まってしまった。あの時店長はなんと言っていただろう? いくら思い出そうとしても全然思い出せなかった。
私の内心に気がついているのか、いないのか、店長はもう一つの写真に目を落とし、こちらに注意を払おうともしない。
「店長、どうでしたっけ?」
「何がです? 私は、この写真が気になるので、どうぞ、刑事さんに説明しておいてください」
私が助けを求めると、店長はこちらに顔を向けることも無く、素っ気ない返事。しかしその時、店長の両肩が小刻みに震えていることに気がついた。きっと、笑いをかみ殺しているに違いない。そうか、これはあの時、話を途中までしか聞かなかった私への意趣返しだな、と今更ながらに理解する。
肝の小さい事を、そう思った私は店長の後ろに回ると震えている両肩に手を乗せ、
「店長の説明が聞きたいな」そんな言葉と共に両手に思いっきり力を入れてやった。
「い、いやあ、そうですか?」
店長は悲鳴こそ上げなかったが、多少引きつった声と共に私に視線を向ける。私は笑顔で、その視線に応えてあげた。もちろん、手の力は緩めず。
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