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「それがどういう事かは分かりませんよ」  店長はそう言って話を締めくくった。それでも、新たな発見に礼を言い、刑事さん達は帰って行った。  そんなことがあって、すでに一週間が経っていた。正直言って私は、その件のことをすっかり忘れかけていた。死体の顔が焼かれているという話題性の高そうな事件ではあったが、その事実は伏せられているのか、顔無し死体である事は報道されること無く、世間ではそんな事件があった事すら無かったかのように時間が流れていた。  時刻は午後三時、私がいつものように店長が入れてくれた紅茶に口を付け、ビスケットをかじっていると、ふいに店の扉が開いた。 「いらっしゃいませ」  私は口の中のビスケットを慌てて飲み込むと、営業スマイルと共に立ち上がる。 「こんにちは」  大野刑事が手を挙げて挨拶する。
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