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「なんだ、刑事さん」
私は言葉に失望の色を含ませると、大野刑事は、
「まあ、そう言わないで」と、笑顔で入ってくる。いつものように石榴刑事も一緒だ。
「今日はどうしたんですか?」
店長は眼鏡を拭きながら尋ねる。何かを予感しているのか、その表情は真剣だった。
「この間の事件、続報があるので持ってきましたよ」
私はこの間の事件と言われても、何のことか、正直ピンとこなかった。何かあったっけ? としばらく考え、やっと、
「松井の事件ですか?」と、思い出した。
「そうそう、その事件、君たちも気になっているかと思ってね」
大野刑事は心なしか上機嫌に口にする。
「別に気にしていませんよ」
私が冷たく突き放すと、大野刑事は、
「そう邪険にしないでも良いじゃ無い」と、軽く応じる。刑事と言えばいかめしいだけかと以前は思っていたのだが、実際に言葉を交わしてみると、意外と気さくな人たちなのだと言うことが分かり、最近は親近感も抱くようになっていた。
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