5/20
465人が本棚に入れています
本棚に追加
/265ページ
「我々もそう見ています。が、なぜそんなことをしたのか、そこが分からない」  石榴刑事はそう言うが、それは私たちだって同じだ。そこに答えを出せるわけも無く、私は黙り込む。 「ところで、被害者は松井で間違いないのですか?」  しばらく沈黙が続いた後、店長が尋ねる。 「はい。それはまず間違いないでしょう。歯形が一致しましたから」  大野刑事は応えるが、そうなると、どうして顔や指紋を焼く必要があったのか、そこが分からない。二時間ドラマではこういうとき、被害者と犯人が入れ替わっているモノだ。今回もそういうことがあったのでは無いか? 私は漠然とそんなことを考えていた。しかし、歯形が一致したと言うことは、その可能性も無いと言うことだ。と思ったところで、先日見たドラマのトリックを思い出す。 「もしかしてあれじゃ無いですか? 他人の保険証で診療を受けていたというトリック」 「他人の保険証?」 「今回の事件で言うなら、松井の保険証を使って別の誰か、つまり、本当の被害者が歯の治療を受ける。そうすると、歯医者にあるカルテ上は松井光勇が患者となる。でも、実際にはその歯形は被害者の物となる分けです」
/265ページ

最初のコメントを投稿しよう!