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「つまり、犯人は松井で被害者は別人だと言いたいわけだね? まったくあり得ないとは言わないけど、なら、その被害者は誰なのか、という問題が出てくるね。死体なんて簡単に調達できる物では無いから」
石榴刑事に改めて言われると、その説はかなり荒唐無稽に思われ、恥ずかしくなった。
「それに、なぜ松井がそんなことをしたのか、という問題もあるね。わざわざ自分を殺すだなんて、普通じゃ無い」
「それは、大学での立場が嫌になって」
先日、松井の立場がかなり悪かったと聞いた事を思い出し、そんな理由を考えたが、
「それにしたって、あと半年もしたら卒業だよ。わざわざその立場を捨てて、松井は今後どうするつもりだったんだろうね」
大卒というブランド、そして、今まで生きてきた松井、それらすべてを失い、今後どのように生きていくのかを考えたとき、そこには絶望しか無いように思えた。では、違うのだろうか? しかし、それならどうして犯人はわざわざ顔を焼くなどという行為に及んだのか、そこが分からずどうにも悶々とする。
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