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 青いタマネギのような図柄が描かれたティーセット、つまり、マイセンのティーセットだ、に、お茶の準備をして、私は店に戻る。マイセンというと、高級な磁器として有名で、安い物でも数万円はする。最初、マイセンだと気がついたときにはこのセットを使用する度に手が震えた物だが、最近では慣れた物で、洗うときですら平然としている。とはいえ、値段を聞いたらそれこそ誤って割ってしまいそうで、そこはわざと聞かないようにしていた。  お茶の準備を終え、店に戻ると、三人は座ったまま、黙り込んでいた。 「お待たせしました」  三人の前にカップを置く。 「それで店長、左腕に腕時計があると、どうして被害者は松井なの?」  私が尋ねると、店長は一口カップに口を付けてから、 「良いですか、もし、殺されたのが別の誰かで、犯人が松井だったとしましょう。そして、松井は被害者を自分と勘違いさせるために被害者に自分と同じ格好をさせる。当然、腕時計も着けさせるわけですが、ここで考えてください。松井は被害者の腕に腕時計を付けるとき、どちらに付けますか? 当然、自分が普段着けている右腕に巻くでしょう。ところが、実際には被害者の左腕にはめられていた。自分の利き腕を間違える人なんていないでしょう?」
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