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 二人の許可を得て、店長は工具箱を取り出した。箱の中から私の腕時計の電池交換をしたとき、バンドを外したのと同じ工具を取り出す。 「こういった三つ折れ式の腕時計は、裏蓋を開けるのにバンドを外さないといけないので」  といって、手慣れた手つきで、メタルバンドを腕時計の本体から外した。  そして、さっきの四角い器具を取り出すと、その中央に穿たれたへこみの部分に革の布を置き、それに包むように時計をおいた。 「本当は、こんな布は使わないことも多いんですけどね。この時計は証拠品ですし、できる限り傷が付かないように」  と、説明をしながら、器具の横にあるハンドルを回した。すると、器具の中央にあるへこみの幅が狭まり、腕時計がそこにかっちりとはまる。 「確実を期すために三点式のスクリューバックオープナーを使いますね」  と、三カ所に突起物の付いたレンチのような工具を取り出した。そして、腕時計の裏蓋にあるへこみにその工具の突起を合わせ、裏蓋を回す。それほど時間が掛からず、裏蓋は外れた。開いた腕時計の中は、私の腕時計の中とそれほど大きな違いは無かった。ただ、腕時計の半分程度を覆うようにして半円形の部品が腕時計の中央に止められている、それが私の腕時計との大きな違いだった。
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