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「では、どうして火曜日に発見されることが犯人には分かったのですか?」 「それは、ゼミの発表があったから」  石榴刑事はそこまで言ってから、あっ、と大きな声を挙げた。 「そうです。火曜日に松井の死体が発見される、そのことを予測できた人物は同じゼミ生だけです。その日にゼミの発表がある事も、姿を現さない松井を誰かが呼びに行くことも、ゼミ生にしか知り得ませんから」  過去に何度か、ゼミ生が遅刻した松井を呼びに行っていた、という情報があった事を思い出し、私はなるほど、と納得してしまう。 「ちょっと待ってください。そこまでは分かりました。しかし、松井を除いたゼミ生は七人います。それがどうして、大島が犯人だと言い切れるのですか?」 「なぜか? それは、大島が長袖だったからです」 「長袖?」  大野刑事達は大島達の服装も含めて、私たちに説明してくれていた。普通に考えれば、そんな説明など省略してもいいはずなのに、私たちにその情報を提供してくれたのは、店長がそのことを尋ねていたからなのだ。もし私がミステリーの読者でそのことを書き落としていたら、アンフェアだと言って作者を詰るかもしれない、などと思っていると、 「なぜ、犯人は松井の顔と指、良いですか、顔と指ですよ? 顔と指を硫酸で焼いたのでしょう?」店長は指の部分にアクセントを付けて発言する。
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