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 大島太輝が逮捕された、その報道が出たのはそれから数日後だった。テレビの報道ではあまり詳しくは分からなかったが、大島太輝は概ね容疑を認めているらしい。  そして、事件から三週間後の月曜日、大野刑事と石榴刑事が店にやってきた。その時刻はやはり、午後三時だった。 「いらっしゃい」  店長が二人の前に紅茶のカップを差し出しながら挨拶をする。これじゃまるで喫茶店だ。 「事件は解決したようですね」  私が水を向けると、大野刑事は手に持った白い箱を差し出す。 「はい。おかげさまで。どうぞ、これは、お礼です」  見ると、今月オープンしたばかりの洋菓子店の箱だった。できたばかりだからかは分からないが、ケーキを買おうと毎日長い行列が作られ、なかなか買うことができないその店の箱を前にして、店長は眼鏡の奥の目を爛々とさせている。もし店長にしっぽがあったなら、激しく振っていることだろう。
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