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「大島は、松井がまだデータを隠し持っているかもしれないと考えていた。そこで、松井の家で松井と打ち解けたふりをし、腕時計の中に隠しているんだ、と言うことをついに聞き出す事に成功し、殺害した」 「腕時計の中から取り出したデータはどうしたんですか?」  私が聞く。 「すぐに処分してしまったそうですよ。もちろん、データを読み取れないように物理的に破壊して。彼女の人目を憚るような姿が入っているのだから当然だと言うことでしたが、あの様子だとたぶん、嘘は言っていませんね」 「となると、そのデータはもう誰の手にも渡らないと言うことですね」  この一連の事件の中で、それだけが唯一の救いだと、私は思わずほっと息をつく。 「とにかく、これで事件は解決です。それもこれもマスターのおかげですよ」 「いえ、僕は部外者として勝手なことを言っただけです。実際に犯人を見付けたのも、証拠の裏付けを取ったのも全て皆さんですよ」  店長はすでに空になった皿を悲しそうに見つめ、私達の皿の上に乗ったショートケーキに未練がましい視線を向けたまま応える。
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