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「いえ、これが普段着ですが」
店長は突然の言葉に多少ひるみながらも、何とか応える。
「まあ、本当ですの? わたくし、一目で気に入りましたわ。この店も」
も? 私は心の中で首をかしげる。も、ということは他にも何か気に入ったのだろうか? と思っていると、彼女は心なしか頬を赤らめ、
「あなた様も」と、付け足した。
「何ですって?」
私はなぜか、そんな叫び声を上げていた。
私の叫びに彼女は首をかしげるが、特に気にする必要は無いと判断したのか、日傘を持っていない方の手で店長の右手を取り、
「私のお願い、聞いてくださいませんか?」と、詰め寄る。
「お、お願い、ですか?」
店長は上半身を引き、たじたじとした様子で応える。しかし、銀縁眼鏡の奥にある目はでれでれとたれていることを、私は見逃さなかった。
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