むかち貴金属店の涙

9/14
前へ
/265ページ
次へ
 彼女はそう言うと、手提げ鞄から手帳を取り出し、さらさらと何事かを記入する。 「こちら、私の家の電話番号となりますので、気が向いたらどうぞこちらにご連絡ください。別の者が出るかもしれませんが、あなた様の名前を言っていただければ、私に通るようにしておきますので。あら、わたくしったら、あなた様のお名前をまだお聞きしていませんでしたわ」  一方的にまくし立てるうちに、まだ名前を聞いていないことに気がついた彼女は、左手で頭を抱えるようにした後、店長に名前を尋ねた。そして店長の名前を聞き出した彼女は、 「もちろん、お礼もさせていただきますから」  そんな言葉を残し、嵐のように去って行った。
/265ページ

最初のコメントを投稿しよう!

465人が本棚に入れています
本棚に追加