むかち貴金属店の涙

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「たとえば、店の乗っ取りとか」 「そんな、考えすぎですよ」  私はついにこらえきれず声を挙げて笑ってしまう。 「だって、何か考えが有ってのことだとしたら、そんな手の込んだことをしなくても、足助の力を使えば何でもできますよ」  足助家はこのあたりでそれだけの力を持っているのだ。お金、権力、地位、名誉、そのすべてを持っていると言っても過言では無い、そんな家が、こんな小さな店に対して、よからぬ事を行うために、そんな手間を掛ける道理など無い、私にはそう思えて仕方なかった。もし、何か考えがあるとすれば、それは、店に対してでは無い、そんな気すらしていた。
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