むかち貴金属店の涙

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 呼び出し音が鳴る間、私たちは息を潜める。程なく、電話が繋がったのか、店長が名前を名乗る。そして、足助手毬を呼び出してもらえるように頼んだ。再びしばらくの静寂が訪れる。店の外から通行人の話し声が聞こえてくるほどの沈黙だった。  相手が出たのか、店長が緊張した面持ちで向智です、と名乗る。 「はい、はい、ええ」  店長の相づちばかりが続き、二人がどんな会話をしているのかが分からない。もどかしく感じながらも、店長の表情から、事はよい方向に進んでいるらしいことだけは察せられた。 「はい、ええ、分かりました」  そんな言葉と共に、店長は受話器を電話に戻す。 「どうしたんですか?」  早く電話が終わることばかり考えていた私は、少しの間もこらえきれずに尋ねた。すると店長は、小さく息を吐き、 「明日、また来るそうだよ」と吐き出すように告げる。
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