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 次の日、私は朝からそわそわしていた。あの、足助家の娘が店に来るのだ。落ち着け、という方が無理だろう。  この間は突然だったため、どうとも無かったが、来る時間が分かっていると、逆に緊張してしまう。 「約束の時間は、一時でしたよね?」  私の問いに、店長は、 「そうだよ」と、こちらも緊張気味に応える。店の時計を見ると、十二時五十二分だった。約束の時間まであと八分、しかし、一時きっかりに来るとは限らない。もちろん、遅れることもあれば、早く来ることもあるだろう。つまり、今この瞬間、姿を現したとしても不思議では無い。そう思うと、思わず息を飲んでしまう。  一秒、二秒、店の時計が時を刻む音だけが響く。 「もしかして、もう来ないかもしれませんね」  壁の時計が一時三分を差したとき、店長が口を開いた。
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