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「ええ。お茶の時間ですよ」
店長の入れた紅茶は相変わらずおいしく、先日お土産としてもらった缶入りのクッキーをお茶請けとしてお茶の時間を楽しむ。
「絵はどんな感じですか?」
「かなり良い物ができそうです」
手毬はかなりの手応えを得ているのか、そう言うと笑顔を見せた。
「もう少しだけ、モデルをお願いしても良いですか?」
一頻りお茶と会話を楽しんでいた私たちだったが、手毬は名残惜しそうにそう言うと絵に戻りたがった。かなり筆が乗っていたのだろうか? その気持ちを逃したくない、そんな意図が彼女の態度から窺えて、私は彼女に好意的な気持ちを抱き始めていた。私も久しぶりに絵筆を握ってみようかしら? そんな考えまで頭をよぎる。思った以上に彼女に感化され掛かっていることに気がつき、私は愕然とした。
店長は、手毬の願いを快諾し、私にも準備するように告げる。私はコップに残った紅茶を飲み干すと、店の外に出る。
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