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 そして、夕方になり、陽が沈み始めると、手毬はやっと作業を中断した。 「ありがとうございます」  手毬は絵を描いたばかりのキャンバスにもう一枚別のキャンバスを被せ、その二枚をクリップで留めながら礼を言う。まだ絵の具が乾いていないため、その絵の具が他の所に付かない様にするための配慮だ。 「完成ですか?」  店長の問いに手毬はまさか、と笑う。 「そんなにすぐにはできませんよ。あらかじめ下地は作ってきましたけど、まだ、描き始めたばかりですもの」 「描き始めたばかり?」  その応えに、店長は若干の狼狽を見せる。絵がそんなに時間の掛かる物だとは思っていなかったのだろうか、 「参考までに聞きたいのですが、完成まで何日くらいかかるのでしょう?」と、質問した。 「そうですねえ、今のペースで行けば、一ヶ月くらいでしょうか」
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