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 店長は店の奥から古い自転車を引っ張り出す。店長が子供の頃、店長の父親が使っていた物だそうだ。優に十年以上は使用されているだろう。あちこちがたがきかけているその自転車を、店長は愛着を持って使っている事を、私は店長自身から聞いて知っていた。  何度も壊れては修理をして使っているその自転車の荷台に手毬を載せ、店長は自転車のペダルをえっちらおっちらと漕ぎながら、足助家のある方角に自転車を走らせる。その様子に私は強い不安を覚えたが、さりとて、何かをできるわけでは無く、私は一人、店の中に戻った。  店長はそれから一時間ほど後に戻ってきた。それから閉店の準備を行い、私は店を後にした。
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