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二時間ほどして、僕はカーテンを僅かに開けたみた。
藤田雅人はまだアパートの入り口に立っている。
(いつまでいるつもりだ、早く居なくなれ)
足元の地面が濡れている。
雨が降り始めたのだ。
傘なんか持ってないだろうから、諦めて帰るだろう…。
そう安易に考え、再び部屋の中で時間が過ぎるのを待った。
雨は、アパートの屋根に響く程強くなっていく。
軽く食事をし、気分転換にテレビを付ける。
夕方近くなっても雨は降り続いた。
僕は再びカーテンの隙間から外を見下ろす。
確かめるために。
まさか…
意外にもそこには、まだあの男がいたのだ。
雨に打たれるのも構わず、僕の部屋を見上げている藤田雅人が。
なんでそこまで…
『…謝りに来た…』
あいつはそんな誠実な男だったろうか…
少なくとも僕が知る藤田雅人は、自分勝手で俺様で、僕を使用人みたいに扱っていた。
挙げ句、レイプ…
僕の体も心もボロボロにした、最低な男だったのに…
わざわざ何時間もかけて東京から、僕に謝罪をしにーー?
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