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「東京でのオレは全部捨ててきた。お前といるために。昨日泊まったビジネスホテルもチェックアウトしたから帰るとこなんかねーよ」
「……」
「オレはお前が好きだ、立花」
あまりにも唐突な告白に僕は絶句してしまった。
だけど自分勝手なのは変わらない…
「僕は嫌いだ…」
雨と薄闇が視界を悪くする。
「わかってる、でも傍にいたいんだ」
僕を傷つけたくせに…
幸せを奪ったくせに…
中途半端にさした傘の端から、雨粒が頬に当たる。
流せない涙のように。
しばらく考えた後、
「雨が止むまでなら…」
このまま向かい合っていたら、僕まで風邪を引いてしまいそうだ。
「部屋に入れてくれるのか?」
「絶対僕には触らないでよ!余計な詮索もなしだ」
「ああ」
明るく答えた藤田雅人とは裏腹に、僕はまた暗い気持ちになった。
ボロを出したら絶対追い返してやる。
☆★☆
「意外に広いんだな。社宅だろ」
「2Kかな、僕には十分だよ」
部屋に入ったのはいいが、2人共服がびしょ濡れだ。
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