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「おいてくれって…会社が社宅を用意しくれるはずだよ」
「急な異動だったんで、しばらくはビジネスホテルから通うように言われてた」
「じゃなんでチェックアウトなんか…」
カーペットの床に、額を付けて、雅人は動こうとしなかった。
「お前と一緒に暮らしたい。そのためなら何でもする。だから頼む、オレを追い出さないでくれ」
「そんな…困るよ」
「オレはお前に酷い事をした。許せないのもわかる。それでも頼む、オレをここに住まわせてくれ」
「……っ」
彼は最初からそのつもりで…
「冗談じゃない…なんで君なんかと」
どんなに懇願されようが、一緒に暮らすなんてゴメンだ。
「お願いだ。お前の傍にいさせてくれ。もう東京へは戻らない」
「……」
雅人は顔を上げて必死に訴えている。
本気…なんだ
「困るよ、いきなりそんな…、それに僕には尾崎さんが…」
そうだ、僕には、既に愛する人がいる。
そう答えると、雅人は、叱られた犬のように哀しげな表情になった。
「オレはどうすればいい?教えてくれ」
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