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生乾きの服を着た雅人とふたり、タクシーで駅近くのビジネスホテルに向かった。
クロークに預けたという荷物を受け取って、次はショッピングモールへ
食材と適度な寝具を買って、アパートに戻った。
僕が借りている部屋は、和室とカーペットを敷いた洋室が各六畳、四畳半程度のキッチンに、バストイレ別、その他の設備。
一人なら快適だろう…、一人なら…
「つ、疲れた…」
「腹がへったな」
僕の心労など意に介さない雅人を腹立たしく思いつつ、食事の用意を始める。
「お、今日は何だ?」
キッチンに立つ僕を雅人が覗き込む。
服は着替えたようだ。
「肉じゃが。キミも手伝ってよ。約束だからね」
「おーよ、まかせろ」
とはりきりつつ、じゃが芋の皮を剥き始めた。
手つきが危なっかしい。
「…てっ」
案の定指を切った。
何か余計邪魔だな。
「もう、いいよ。君はテレビでも見てて」
「悪いな、役立たずで…」
絆創膏を渡すと、雅人は情けなさそうな顔をした。
「べつに…」
素直な雅人は不気味だ。
「オレ、やっぱりお前が好きだ。立花」
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