微笑みの残像

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僕は自他共に認める方向音痴。 フロンティアに入社するまで通勤や通学ラッシュとは縁のない生活だった。 それは、実家が比較的裕福なのと、両親に、危険な事はすべて禁止され、幼い頃病死した妹の分も過保護に育てられたのが要因の一つだと思う。 「そう言えば…入社式の日、ラッシュの人波に揉まれて、二駅前で降ろされたんだよね」 再び電車に乗ろうとしたけれど、どの車両も満員で小柄な僕は直ぐに押し出されてしまった。 仕方なく、駅員に出口を聞いて、地上に出てはみたものの、右も左も解らない。 携帯のナビや道行く人に場所を聞きながらやっとフロンティアが入っているビルに着いたのは、入社式開始8分前… 「あーっ、あの時一階に居たのは君だったんだ。雅人」 「そうだよ、思い出したか?」 「…て君僕を騙したんだよね。社員のふりをして」 「騙したんじゃねーよ。お前が勝手にオレを社員と勘違いして話し掛けてきたんだろ」 そうだあの時、一階のエントランスで社員証を掛けた雅人を、既にフロンティアの正社員と勘違いして尋ねたんだっけ… ☆★☆
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