【14】ガソリンスタンドと金物店

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それから、十日ほど経ったある日の朝。 いつのまにか金物店にも、 『売地』の張り紙が張られていた。 少しずつ何かが変わっていく光景。 変わらないのは 何ごともないかのように、相変わらず続く車の列と湿気を含んだ嫌みな雨。 そして、店の中に残されたまま金物類。 おじさんはどうしてるんだろう…。 おじさんに家族がいるのは知っていた。 たまに、家から娘さんらしき人が出てきて、スタンドの横に停めてある赤い車に乗り込むと、 颯爽とどこかへ行くのを目にしていた。 おそらく仕事へ向かっていたんだろう。 そして、それから。 また更に数週間ほどたった日の仕事帰り。   交差点を通り過ぎる瞬間に感じた 妙な違和感……… …ハッ! バックミラーにわずかに写った、 ガソリンスタンドと金物店の変わり果てた姿。 思わず、その光景に一瞬時間が止まったような気がした。
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