【14】ガソリンスタンドと金物店

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そして、次の日には。 おじさんの家は 外壁のほとんどが取り払われていた。 ぽっかり空いた壁からは、家の中の様子が少しだけ見えた。   当然、家財道具などはなにひとつ見当たらないが、 まだ残されている内壁にはカレンダーや風景のポスターが貼られたまま残っていて。 そこには確かに人の『暮らし』があったことを物語っていた。 不思議な感覚。 少し前まで間違いなくここには人が住んでいて、きっとたくさんの思いでもあって。 楽しかったことも辛かったこともこの家はすべてを見てきたはずなのに。 自分の力じゃどうしようもないことは、世の中にはたくさんある。 時代が変われば目に見る景色も変わって。 それを時代の進歩だと錯覚しそうになるが、不条理な理由で景色が変わっていくことのほうが多いのかもしれない。 数日後。 残されたコンクリートの破片も 綺麗に片づけられ あの家もすべて無くなった。
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